「クラシック名曲サウンドライブラリー」提供のクラシックの楽曲をお届けします。
クラシックで癒されながらパソコンでお楽しみください。
「小さな楽しいピアノ曲を30ばかり作曲しました。
そのうち12曲を選んで《子供の情景》という題をつけました。
あなたはきっと喜んで弾いてくださると思います。」
これはシューマンがまだ結婚前に、やがて妻となるクララに送った手紙です。
ふたりはたがいに想い合っていましたが、クララの父ヴィークは猛反対していました。
「クララは本当に僕を愛してくれるが、僕は永久に彼女を諦めねばならないのだろうか。」
ヴィークの怒りの激しさに、シューマンは一時、自信を失いかけていました。
シューマン25歳、クララ16歳という年の差も、ヴィークが許せなかった点かもしれません。
しかし、クララのシューマンへの愛は強かったのです。
「私はどんな事態が起ころうとも、ロバートを見捨てません。」
と、心に固く誓うのでした。
シューマンの代表作のひとつ《子供の情景》は、こうしたことがあった時期に作曲されました。
この13曲からなる小品集には、子供の頃への憧れや追想が描かれています。
「これは、子供のための曲ではなく、大人の回想であり、大人のためのものです。」
10年後に友人に宛てた手紙でこう書いているように、《子供の情景》は子供が
演奏したり聴くためではなく、大人が子供時代を振り返るためのものです。
「僕はこの曲を弾くと、幼い日の思い出が甦ってきて感動してしまう。」
とシューマンは常々、周囲に語っていたといいます。
《子供の情景》でもっとも知られるのは、第7曲『トロイメライ(夢想)』です。
シンプルながら旋律の美しさは比類がなく、余計な装飾や大掛かりな展開を
必要としない、洗練された完成度の高さを感じさせます。
またシューマンならではの凝った和声進行が楽曲に色を添えています。
とにかく旋律そのものに力があるので、ヴァイオリンやチェロなどの器楽曲
として編曲されたり、歌詞をつけて歌われたりと様々な形で親しまれています。
ショパン『別れの曲』やバッハ『G線上のアリア』のような、
クラシック名旋律の代表的な曲のひとつとして、
CDのコンピレーションアルバムにもよく収録されています。
*ヴァイオリン編曲版を公開していましたが、今回は原曲のピアノ版です。
「2013年05月14日クラシック名曲サウンドライブラリーより」