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静かな住宅街の一角からバイオリンの音が聞こえてくる。すばらしい音色である。音の主の玄関を訪ねるとドアにも呼び鈴のボタンにもバイオリンの形をした木型が付いている。 いい音を求めて50年。「今やっと五合目ぐらいかな。バイオリン作りの頂上が微かに見えるようになった」という、笑顔が優しい工房の主がそこにいた。 昭和30年、大学(東京工大)のオーケストラにいたとき、コントラバスの修理をする方が化学研究室で松脂の研究に来られた。その人が無量塔蔵六(むらたぞうろく)さん。バイオリン作りでは有名な方で、バイオリンの仕上げに使うニスの研究をされていた。 それが引き金になって、無量塔蔵六さんのご自宅に通って直弟子となった。時には終電がなくなるころまで居残り、夜道を歩いて帰ったこともある。無量塔さんは現在『東京Violin製作学校』を主宰している。 - 計測器の知識をバイオン作りに生かして 工学部で電気を専攻したこともあって、学校を卒業すると電機会社でオートメーションの計測器の設計に携わっていた。電気量の変化共鳴音の分析は得意中の得意である。サンデーバイオリン作りが40年ほど続いた。 アメリカ資本の会社に勤めていたので、定年制度は無かった。仕事にもそれなりの魅力を持っていた。しかし60歳を前にバイオリンメーカーとして立ち上げた。 「食えるか、食えないか、分からないけれど、メーカーになるというのが魅力」で、夢の実現に踏み出した。 - 一筋縄でいかないところが、魅力なんでしょうかね バイオリン作りの魅力は『反省の日々』です。 表の板はスプルースという松の木の系統のものを使い、裏や横はカエデを使う。 「スプルースは軽くて、バネっ気があるから、音の反響をもたらすのです。実は、日本のヒノキを試してみたのですが、スプルースとは違う独特の音色になりました」産地を根気よく探していけば、有望かもしれないという。 この木を買ってきて、約20年は乾燥させる。 木の乾燥だけならそんなに長く乾かすことは無いのだが、木の樹脂が長い間にポリマライズされるといい音が生まれる。 輪切りにしたスプルースを年輪の中心部から放射状に割り、断面が楔形になった厚い部分を背中合わせに張り合わせ、表の板を作っていく。そして形を作り、反響しやすいように板を削っていく。 「形作りは誰でも出来るのです。木工技術は全体の半分以下の仕事です」ただ、板の各部の振動のデータを取りながら削り、各部の厚みを出していく。形が出来たらニスを塗る。音の良し悪しは微妙な調整で決まっていく。 - 蝋燭しかない時代の音に挑戦 イタリアなどヨーロッパの製作者は何百年も歴史を持つファミリーが作っている。ファミリーには代々伝わる型紙やご先祖が買い貯めた材木、そして門外不出、口伝による製作の秘密を駆使して、300年前と同じものを作っている。 泊川さんはその神がかりともいえるような技術の秘密に探りを入れようと研究を重ねる。 人間の耳では分かっているのに、物理的に正解が出ない。オシロスコープやCTそしてコンピュータを使って、その秘密を解き明かそうとしている。 泊川さんは現在ニューヨークにあるVSA(the Violin Society of America)の数少ない日本人会員である。 「アメリカ人は秘密を守れない性分ですから」気軽に情報交換をしている。今日もインターネットでデータが届けられた。 - 求む、音にうるさい弾き手 泊川さんは熱をこめて最後にこう話す。 「バイオリン作りのレベルアップに必要なのは木工技術者、音響技術者、そして音にウルサイ弾き手。この共同作業が大変大事なのです。ハイフェッツやアイザックスターンの協力があったればこそ、バイオリン作りの技術が前に進んだのです」 日本はここが他国に比べ大分遅れている。音のウルサ方の皆さんのバイオリン作りへの参加を強くよびかけている。 ストラディヴァリは96歳までバイオリンを作ったという。泊川さんも向こう100年分のスプルースを持っている。 「私の命題として、誰もがいいバイオリンが出来る、物理量を表すことです」 柔和な笑顔の中に、研究者として熱意が光っていた。 - Violin工房から 弦楽器はじっくり弾いてみないと、よく分からないところがあるので、当工房の製品は無料である期間貸し出しています。興味ある方はぜひ試奏してください。楽器はソリスト向けによく響きます。 :*:*:*:*:*
泊川Violin工房http://www.ne.jp/asahi/violin/tomarius/ (取材・文/阿部 克巳)
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