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「いただきます!」 「あれあれ、これって、この間、お弁当がはいってた箱が重なってるよ……」 「重箱っていうのよ。ほら、中にはごちそうがはいってるでしょ」 「お正月みた〜い」 椎名さん一家は、広一パパと春菜ママ、小学校二年生の七海ちゃんの三人家族。土曜日にはいつも、ママの実家でお昼ごはんをいただきます。今日は、まるでお正月のお節料理のようなごちそうが並んでいます。 「それじゃ、箸をつける前に、あそこのカメラのほうを向いてニッコリ、チーズ!」 カシャ 「え? おじいちゃん、食事前にみんなの写真を撮るんですか? なんかの記念ですか?」 「来年の年賀状用の写真にするんだよ。そのために、お節料理を作ってもらったんだから」 カシャ 「年賀状? 2006年の? ななな、なんと気の早い」 「早くはないぞ。本屋さんには、本賀状の本が並び、郵便局も年賀状を売り出しとる。すっかり出遅れてるぐらいだ」 カシャ 「それで着物姿だったんですね。しかし、おじいちゃんの年賀状に、うちの家族までっていうのは、なんかヘンじゃありませんか」 「まぁ、そう固いこというな。なんか大勢のほうが、にぎやかで楽しいじゃないか。それに今年はデジタルカメラ買ったんだから、パソコンに取り込んで、自分で作ることにしたんだよ」 カシャ 「おじいちゃんたら、お向かいの瀬野さんとこのご家族写真に刺激されちゃったのよ」 「ああ、あの、息子さん夫婦と同居してる……。そういえば、今年、お孫さんが生まれたんだったわね。ご近所中に、写真、配りまくってたものねぇ。ひょっとして……おじいちゃんの写真のライバルなの?」 「いいや、ライバルとは認めんぞ。ワタシの腕なら、あんなヤツには負けん!」 カシャ 「ねぇ、まだぁ? いっぱい撮ったよね? もう食べてもいい? おなかすいちゃったよ」 「うむ、そうだな……。それじゃ、あと3枚で終わりに……」 「え〜? まだ、撮るの?」 |
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