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COREをデザインしたらこうなった |
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この夏、LaVie Cが大きく変わった。オールインワンノートパソコンとして、無機質な機械ではなく、機能美ともいえるスタイルにこだわり、従来製品とは、まったく異なるデザインワークが印象的な製品だ。山形県米沢市に、NECカスタムテクニカPC事業部を訪ね、このプロジェクトに関わったチームに会ってきた。 |
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ゼロリセットの思想が生んだ新生LaVie C |
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この製品の進捗管理責任者でもある普後(NECカスタムテクニカPC事業部商品開発部)は、モバイル
インテル(R) Pentium(R) 4 プロセッサ-Mを使ったコンシューマー用のノートパソコンとして、新LaVie Cを企画するにあたり、コストとの綱引きの中で、従来製品に対して、ひとつひとつの仕様をすべて見直したという。従来機種にあったから、新しい機種にも残しておこうという考え方ではなく、必要なもの、必要ではないものを考え直そうというゼロリセットの思想が彼の中にあった。
その結果、たとえば、従来機種にあったオーディオの光OUTやイルミネーションエンブレムははずれた。そのコストやスペースが、他の部分にまわり、USB2.0ポートを4つ装備することができている。また、新開発の広視野角ハイレゾ液晶を採用するなど、高級機としての存在感も高く仕上げられている。
こうした細かい仕様詰めの一方で、最初にデザインありきで開発が進められたことも、新LaVie Cのキャラクターを物語る重要な要素となっている。
そのデザインを担当したのが前村浩三(NECデザイン デザイングループ2 エキスパートデザイナー)だ。
「ノートとしての機能美って何だろうということを考えたときに、ひとつひとつのデバイスを見直すことを思いつきました。それぞれのデバイスを機能美として再構築することができれば、完成したノートになるという発想です。構成要素を洗い出すというのは、ベーシックなデザイン手法なんですが、それをそのまま造形に持っていくのは初めてでした。
話があってから、2週間半くらいでモックアップができあがりましたね。通常は最短でも一ヶ月、普通は二ヶ月かかります。だから、早かったですよ」 |
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シリーズ感を否定する |
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前村はLaVie
Cのシンボルでもある「C」から「CORE」という単語をイメージした。そして、スケッチを描く…。日常の生活の中で、思いつくまま、傍らのポストイットに殴り書きされたラフなスケッチだ。
「COREっていうのは、 根底に流れるものというイメージですね。表面だけのものにはしたくなかったんです。
本格的なデザイン作業は、いきなりモックアップ図面から始めました。普通は、スケッチを起こすところから始めるんですが、最初から製図にかかったんです。頭の中で、三次元のレベルまで具現化したイメージができあがっていたからでしょうね。
でも、今回はつらかったですよ。だって、今まで、自分がよかれと思ってやってきたものをすべて否定することから始めなければならななかったんですから」
前村は、デザイナーとして、前回のLaVie Cのデザインを担当している。当然、シリーズ感は重要な要素であり、後継機種にはそれを持たせることが常に頭にあった。ところが、今回は、一気に180度の方向転換である。
「オールインワンパソコンの重厚感を考えました。きっと、こちらの方が正しいんだと思います。コンセプトはコンビネーションデザインですね。パームレストのマットなイメージと、コア部分の光沢感の対照を演出し、相反するイメージを合体させることで、両方を生かそうとしてみました。そのことで、メッセージ性が強くなっていると思います。見る、触れるといった動詞をデザインする試みです。
そんなことを頭において、各機能の集合体としてデザインしていったら、意外に簡単にできあがりました。素直なデザインになっているのは、複雑な理屈や媚びが封じ込められていないからでしょうね」
そのデザインで悩まされたのは構造設計を担当した高橋(NECカスタムテクニカPC事業部商品開発部)だ。NECは、他社より比較的、設計基準が高く、騒音のレベルに関しても抑制の努力を強いられる。今回のLaVie
Cでは、2つのファンを使うという逆の発想で音を静かにしているという。風切り音を抑えるための工夫だ。当初は、左側面に孔を空けて風を拾うという案もあったが、ヒートパイプの配置を工夫して回避されている。また、ユーザー層の裾野が広がっているせいか、最近は、ハードディスク周りのトラブルが多く、耐衝撃性を高めるというミッションも合わせて課せられている。 |
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皮フェチとノートパソコン |
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LaVie
Cを左側面から見ると、DVD/CDドライブのトレイが見える。が、そのトレイの横幅は、ディスクの直径よりも狭い。これではディスクをセットできそうに見えない。
イジェクトボタンを押してみれば、その謎は解ける。光沢部分とマット部分の切り替えの部分にマッチするように、トレイに化粧パネルが施されているのだ。こんな部分にも前村のこだわりが感じられる。
実は、今回のLaVie Cのデザインは、デザイナー4名で案を出し、それらを比較検討するコンペ方式で選出されている。そんな中で、インテリアやファッションとからみあうことを想定し、広がるユーザー層を見据えたデザインを考えた前村の案が採用された。
「今後のLaVie Cは、ベースデザインをそのままに、異業種のデザインテーストを取り入れ、テクスチャなどの要素を積極的に採用していきたいと考えています。パームレストに皮装というアイディアも、もしかしたら本当に実現できるかもしれません。それがいいか悪いかは別ですけど(笑)」
ちなみに、前村は「皮フェチ」と自分を称する。欧米の革靴を大量に靴箱にため込み、時間があれば、磨き込んでいるという。趣味は靴磨きなのだそうだ。皮装のLaVie Cが世に出てくるのも時間の問題かもしれない。 |
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