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「いただきます!」 「ママ、スゴイ。ずいぶん豪華なお弁当だね。紅葉の葉っぱものってるよ」 「これ、懐石弁当よ。おばあちゃん、スゴク凝ったお昼作ったのね。あ、葉っぱは食べちゃダメだけど、人参の紅葉は食べていいから」 「上手にできたでしょう? 箱につめると豪華に見えるのよね」 椎名さん一家は、広一パパと春菜ママ、小学校二年生の七海ちゃんの三人家族。土曜日にはいつも、ママの実家でお昼ごはんをいただきます。今日は、このまま行楽に持っていけそうな懐石弁当です。 「秋茄子に南瓜の煮物。はじかみ添え銀鱈の西京焼も絶品ですね〜。味も最高、飾りつけの演出も素晴らしい」 「そうだよな、広一くんも、演出が大事だと思うだろう?」 「はいっ? いや、その、味だけじゃなくて、見た目も美しいということでして」 「もう、おじいちゃんたら、なにが言いたいの? 演出過剰だとシツコいって思われちゃうわよ」 「ママもおじいちゃんも、いったい、どうしたんだい?」 「……おじいちゃんね、ママとケンカしてるんだよ」 「七海、言わなくてもいいの。お父さんたら、ほんとにガンコなんだから」 「ガンコじゃないぞ、センスの問題だ。やはりオープニングは演劇からはじめたほうがインパクトがあるんだよ」 「素直に最初の演奏からがいいに決まってるでしょ」 「???」 「七海のせいなんだよねぇ。この間の発表会の……」 「七海の小学校の、秋の発表会のこと?」 「うん。七海が『赤ずきん』やって、木琴で『小さな秋』を演奏したでしょ。パパがビデオで撮影してくれた、あれなんだけど」 「演劇とか演奏とかっていうのは、それか」 「七海ちゃんのせいじゃないんですよ。昨日、ママが、おじいちゃんにビデオの映像を見せてくれたんだけど、おじいちゃんたら、この間、広一さんがやったみたいに映像を編集してDVDを作ってみたくなったみたいでね。それで、最初は仲良く相談してたんだけど、そのうち意見がわかれて。おじいちゃんは、七海ちゃんが赤ずきんの姿でしゃべってるところをオープニングにしたいんだけど、ママは素直に最初からのほうがいいってモメているのよ。広一さん、なんとかならないかしら?」 「うーん、解決するには……編集作業をするしかないですね。ビデオは、ここにあるから、パソコンとカメラを接続して。ええとー、映像を取り込むんだから『SmartHobby(スマートホビー)』を立ち上げて……、よし、これで準備OK。ま、なんとかなるでしょう」 「さすがパパ」 「助かりますよ!」 「その前に、ごはん、食べていいですか? ぼくもう、おなかペコペコで……」 |
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