|
「あら、七海ちゃん、上手だわねぇ。この文字とパピーのバランスがいいわねぇ」 「そしたら、おばあちゃんもこの年賀状使う?」 「うーん、そうねぇ。おばあちゃんにはこの年賀状はモダンすぎるかしら。パピーの写真もかわいいけど、やっぱりみんなの写真がいいわねぇ。おじいちゃん、この紙で印刷してくださいます?」 「おや、これは和紙のハガキ用紙か」 「最近は、こういうのもたくさん売っているのねぇ。昨日、ママとパソコン屋さんの紙を売っているコーナーを見てきたんですよ。光沢がある紙や手漉き風の和紙なんかもあったわね。紙を変えるだけでも、ずいぶんと印象が変わるんですよ」 「ほんとだねぇ。七海は、ツヤツヤの紙がいいな」 「去年、薄めの用紙に折れ線が印刷されてて、折ると紙飛行機ができる年賀状を送ってきた人もいたわよ。そういうのをもらうと、忘れないわね。それでね、ママは、こういうのを見つけたの」 「それ、なぁに?」 「これ、低粘着の貼ってはがせるシートなのよ。丸く切り抜いてシールを作るでしょ。それを大吉って印刷した上に貼ると」 「へぇぇ、はがす占いになるんだね。楽しいねぇ」 「こするとでてくる、銀ハガシみたいなシールも売ってたわよ。なぞなぞを書いて、答えのとこを隠すとか、いろんな使い方ができるわね。写真の顔のとことかにはっても楽しいわね」 「ママはわたしが撮った写真を使うかい」 「え〜、それじゃ、同居はじめたみたいじゃない。3人だけ写ってるのなら、いいんですけど」 「……そ、そうか……」 「ウソウソ、冗談よ。おじいちゃんの写真、みんなの笑顔がいいものね。あの写真、使わせていただきます」 「春菜はわかってくれると思ったよ。よし、それじゃ、さっきのデザインを呼び出して……」 「あ、おじいちゃん、デザインは七海にしてもらうから。七海のほうがモダンなんですもの」 「……そ、そうか……」 |
|
「で、結局、今年の我が家の年賀状は、おじいちゃんの写真になっちゃったのか」 「戌占いと2種類作ることにしたからいいじゃない。それにしても、パパはこの写真、気に入らないの?」 「悪くはないけど、ぼくだって使いたい写真があるんだけどなぁ」 「そうねぇ。それならあなたも、自分用の年賀状を作ったらいいじゃない」 「そうだよな。パソコンで自分で印刷するんだったら、何種類も作りわけたり、いろんな年賀状が作れるもんな。ちょっと、どの写真がいいか見てくれないかな」 「どれどれ? えぇっ? こんなにあるの?」 「うん。今年1年撮った写真から選んだんだよ。こっちのは、七海がかわいいし、これは、パピーがやんちゃなカッコしてていい感じだろ、これは君の服がステキなやつ、これは旅行に行ったときの……」 「そうねぇ、気に入った写真を何枚も使って作るのも良さそうね。どんな1年だったのかもわかるし、おすましした写真より動きがあって楽しそうだし。いっそ、全部使ったらどうかしら。……それで、あなたの写ってるのは?」 「……あ」 「パパがカメラで撮ってるのばっかりだから、肝心な自分の写真がないのね」 「ママ、ちょっと撮ってくれないかな」 「え〜、私? カメラ、苦手だから無理よ〜。そういえば、おじいちゃんが撮った写真、あれ、あなたいい顔してたわよ」 「え、結局おじいちゃんの写真を使うのか……いや、決めた! 年末まで、まだ時間はあるんだ! いまから、あの写真に勝てるベストショットを撮るぞ。デザインもオリジナルで……」 「おじいちゃんのおかげで、パパまで、年賀状に夢中になっちゃったね」 「ふたりは永遠のライバルってとこね」
|
|
このページの上に戻る |