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「いただきまーす。寒い時期には、やはり鍋物が一番ね」 「これ、なんていうオナベなの?」 「韓国のビエンローっていうのよ。豚肉と白菜と白滝がおいしいでしょう。冷蔵庫の残り物もこうすれば、主役に早変わり」 椎名さん一家は、広一パパと春菜ママ、小学校二年生の七海ちゃんの三人家族。土曜日にはいつも、ママの実家でお昼ごはんをいただきます。今日は、昨日のすき焼きの残りの食材を上手に使って、おいしいお鍋料理のお昼ごはんをいただいています。 「残った野菜も、こうすると、なかなかおいしいわね」 「なんでもそうさ。捨てたらもったいないからな」 「へぇ、案外おじいちゃんて、もったいないっていう人だったのね」 「まぁな。さぁて、ゴハンを食べてる皆の衆。箸を休めてちょっとこっちを見てちょうだい。今日集まってもらったのはほかでもない。この品物、そんじょそこらのものとは、出来がちがう、素性がちがう。舶来ブランド・ウェッジウッドのティーカップだ。これで紅茶を飲んだ日にゃ、貴婦人のように英語だってペラペラと……」 「なぁに、いきなり、おじいちゃんたら」 「おじいちゃんじゃない。わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又……」 「東京・世田谷でしょ」 「帝釈天で産湯を使い……」 「なぁんだ、フーテンの寅さんのものまね……」 「いいかい、ここに並んだ品々を、おばあちゃんは捨てるとおっしゃる。そんなもったいないことは、お天道様が許しても、このおじいちゃんの目の黒いうちは……」 「ようするに、捨てようと思ったティーカップや、納戸にしまわれていた不用品をウチにくれるって話なのね」 「そう。はいはい、ありがとうございます。じゃあ、これ持ってってね」 「って、ウチだっていらないわ。ティーカップだって、デザインがほかの食器とあわないし」 「うむ、やっぱりダメか。買ったら5000円はする品なんだが。貰い物で趣味があわなくてなぁ。かといって、納戸にしまっておくにも限度があるし。サクラ……じゃなかった、春菜がもらってくれないと、やはり捨てられてしまう運命か、くぅぅ」 「そうねぇ、町内会のバザーとかリサイクルショップにでも持っていけば?」 「ああ! それならいっそ、オークションにだしてみましょう。『ヤフー!オークション』とか『ビッターズ』なんていう、ネットオークションですよ。けっこう売れるらしいですよ。お小遣い稼ぎもできるかもしれないし。環境のことを考えると、ゴミとして捨てるより、ずっといいと思うんですよ」 「パパは案外エコの人だったんだね」 |
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