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「ネットオークションって、どんなサービスなの?」 七海ちゃんがパパに質問しました。 「うーん、なんていうかなぁ。フリーマーケットってわかるかい? 市役所の前でやってる時に行ったことがあったよね。いろんな品物に安い値段をつけて、お店屋さんごっこしているみたいだったろ? ああいう具合に、品物を売りたい人が、品物の画像や説明をオークションサイトに登録しておくんだ。そしたら、買いたい人は、そこを見て、品物を探せるだろ。毎日、フリマが開催されているような感覚の、ネットのサービスなんだよ」 「フリマだと、会場に来た人しか買えないけど、ネットならたくさんの人が買えるだろ」 「でも、ひとつの品物に、たくさんの買いたい人が集まったらどうするの?」 「七海なら、どうする?」 「早いもの勝ち、かな?」 「そこがオークションとフリマのちがいでね。どうせ売るなら、高く買ってくれる人に売りたいだろ?」 「ママは、1円でも安い品物を、毎日探しているよ」 「そりゃ、えらい。買う人にとっては安いほうがいいけど、中には高くてもいいからどうしても欲しい人もいるよね。だから、買う人は、自分が買ってもいい金額をつけて『入札』するんだ」 「いくらで買いますって登録するんだね」 「期限を決めておいて、その間に、一番高い価格をつけた人に売るわけだ。ここで欲しい人どうしが、金額の競争=競り合いになったりすることもあるんだよ」 「せり? 学校で習ったよ。卸売市場でやってるのも、せりっていうんだよね」 「そうそう。美術品や骨董品のオークションでは、ハンマープライスなんていったりするんだっけ。一番高い価格をつけた人が、品物を『落札』できるわけだ」 「なるほど」 「まぁ、ネットオークションでは、売り手が決めた価格で売るとか、専門の業者に出品を代行してもらうとか、いろいろな売り方があるみたいだけど、こういう不用品の場合はもらってもらうつもりで……」 「ウチには不用品でも、欲しい人にとってはお宝かもしれないでしょ。能書きはいいから、さっさと登録しましょうよ」 「ごはんのかたづけが終わったから、ママ参戦だね」 「で、どこに出すの? やっぱり、ヤフー!オークション?」 「うーん、そうだな。ヤフオクは売れなくても出品手数料がかかるんだよね。売れなかった時は無料だし、初心者も使いやすいビッターズでどう? 女性ユーザーも多いみたいだし」 「どんなサイトなの? わたしにも見せて……。ここね。あら、いろんなジャンルにたくさん品物があるのねぇ。こんなにたくさんの人が品物を売っているのね。負けてられないわ。どんどん儲けましょう!」 「……あのね、お小遣いなんていったのはボクだけど、儲けるなんてほどには売れないからね。あくまでも不用品を使ってもらうっていう謙虚な気持ちで……」 「なにをブツブツ言っているの。ああ、どうしていままでこのサイト、だれも教えてくれなかったのかしら。このスカート安いわぁ。欲しかったブランドのなのよ。ああ、こっちのコートも七海に似合いそう……」 「うわ、さっさとユーザー登録をすすめている……。ママ、今日は、買うんじゃなくて、売るんだから……」 「……ママ、聞こえてないよ。目の色、かわってるもん」 |
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「ええと、おばあちゃん、オークションに出す品物は、これで全部ですね?」 「納戸にはもっとありますけど、まぁ、とりあえずこんなものかしら。これが全部なくなると助かりますよ」 「そうですね。それじゃ、出品準備をしましょう。おじいちゃん、出番ですよ」 「よしよし、撮影準備はできてるぞ」 「オークションは、フリマとちがって、現物を手にとることができませんからね。どんな商品なのか理解してもらうためには、画像と商品のデータが大切なんですよ」 「で、まず、物の撮影か」 「品物の全体がわかるような画像は必ず必要です。傷やイタミがある場合には、どんな状態なのかわかるように、その部分も見えてるといいですね。画像を複数使える時は、そんな箇所のアップもあるといいですね。使い方がわかりにくいものは、使ってる様子なんかでもいいんですよ。買う人が知りたいことがわかるのがトラブルを防ぐコツです」 「なるほど、そうすると背景はシンプルなほうがいいな。白いシーツをひいて、色が正確にわかるようにしよう」 「さすが、おじいちゃん。そうですねー、こだわる人は影がでないように光線のあたる角度っていうんですか、ライティングまで凝るみたいですけど。まぁ、普通は太陽の自然光で、明るく撮影すれば十分です」 「まかせとけって」 「おじいちゃんが撮影している間に、ママは、さっき頼んだ商品の名前と型番、それに市販されてる価格を調べてくれたかな」 「だいたいできてるわよ。メーカーのサイトの元の販売価格と、量販店のサイトで検索して、実際に売ってる価格の両方をちゃんと表にしておいたわ。あと、品物を一通り見てまわったら、どんな説明が必要か、だいたい検討がついたわ。商品の大きさや、箱の中になにがはいっているか書き出しておいたし、それからウリというか魅力というか、いいところも」 「いやぁ、寅さんの妹のサクラさんみたいに気がきくなぁ。そういう製品情報のことをスペックっていうんだ。洋服のサイズ表記みたいなものだね。家電品はそういうのがとても重要なんだ」 「未使用とか、希少品とか、未開封とか、そういう単語は、やはり目にとまるわね。キズや使用感もなるべく正確に、細かく書いてあるほうが、信用できる印象だわ。返品や、取引・支払いの条件、送料落札者払いとかも、ちゃんと書いておかないと……」 「会社にもママみたいな有能な部下がいてくれたらなぁ……ってグチっててもしょうがないな。さぁ、ここまでできたら、登録だ」 「みんなで手分けしてやると早いわね」 「そう、ここまでがちょっと面倒だけど、あとは簡単だからね。ユーザー登録はしてあるから、すぐ出品できるよ。ビッターズのサイトの右上のほうに、出品って項目があるだろ。これを押すと、商品を登録する手続きの画面になる。どんなサイトを使う時も、必ず、使い方やルールが書いてあるところをきちんと読むことだよ。ビッターズは右側に初心者マークのついた『初めての方へ』ってとこがあるから、しっかり読んでね」 「全部、読んだわ」 「そしたら、「出品するには」のページの右側にある『簡単出品』をクリック」 「その上の『出品する』とはちがうの?」 「『簡単出品』だと、記入する項目が少なくてすむんだよ」 「まず、商品のカテゴリを選ぶのね」 「一覧から『住まい・インテリア・花>食器』を選んで、さらに次のページで『ウェッジウッド』。次のページで、『商品名』『商品説明』『開始価格』『取引方法(銀行振込か郵便振替のいずれか)』『画像(1枚のみ)』を記入していく」 「品物のデータはさっきまとめたのをコピペして、おじいちゃんが撮影した写真をパソコンに取り込んで指定して……、『銀行振込で確認後に発送』のところにチェックと。あ、そうそう商品の価格なんだけど」 「いくらにするの?」 「最初から、高くするとだれも入札してくれないからね。ママなら、このティーカップ、いくらだったら買う?」 「そうねぇ、フリマなら、2000円てとこかしら。このサイトでは同じような品物が1000円ぐらいから出品されていたわ」 「元の価格の1/5か。まぁ、いいセンかな」 「それじゃ、対抗手段として、900円でどうかしら」 「そうだね。同じような品物があったら、人は安いほうに入札するね。数日して、だれも入札していなかったら、もっと安くすればいいんだし……」 「あ、おじいちゃんが泣いているわ……」 「これでOK。ほら、もうページができたよ」 |
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