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「いただきまーす!」 「今日のお昼はゴーヤチャンプルーですね。沖縄料理は健康にいいですからねぇ」 「ちょっとニガイよ……」 「それが食欲増進だし、ビタミンCが豊富で体にいいのよ」 椎名さん一家は、広一パパと春菜ママ、小学校二年生の七海ちゃんの三人家族。土曜日にはいつも、ママの実家でお昼ごはんをいただきます。今日は、おいしい沖縄料理。島ラッキョウやラフテー(豚三枚肉の角煮)など珍しい食べ物がテーブルにたくさん並んでいます。 「最近は、ゴーヤやシークワサーもスーパーで買えるようになったわね」 「そうそう、最初は使い方がわからなくてとまどったけど、ネットで調べたら、たくさんレシピがあったし」 「そうですよ、料理の方法さえわかってしまえばね。おいしいし、健康にもいいし」 「新しい食材もどんどん試してみるといいわね」 「そういえば……、ウコンを買いに橋向こうのお店にいった時のことなんですけどね、広一パパをお見かけしましたよ。あんなところでなにしてらしたの?」 「あら、昨日の昼間? パパ、会社に行ってたんじゃないの?」 「昨日ですか……? えーっと、昨日の昼間は営業の人につきあって、上野の取引先のところに行ってましたけど」 「あら、でも、あれはどうみても広一さんでしたよ」 「ほう、広一くん、なにか秘密のニオイがするな」 「なんかねぇ、七海のクラスのまゆみちゃんのパパ、会社つぶれたのにナイショにしてて、公園にいたらしいよ」 「ヒミツだのナイショだの、やめてくださいよ。会社に一度もどって、帰宅したのは夜9時過ぎだし」 「そうよ、おばあちゃん、見間違えじゃないの?」 「いくら老眼だといっても顔を間違えたりはしませんよ。メガネもかけていたし。それに、私が誕生日にあげた、緑と黄色のストライプのネクタイをしていましたよ」 「あら、たしかに……昨日は、おばあちゃんからもらったネクタイだったわ……」 「え、え? ぼく、ウソついてたりしませんよ」 「なにか、昨日のあなたの行動を証明してくれるものはないの?」 「そんなの、あるかなぁ……」 「ヒミツ諜報部員ということにしておけよ、広一くん」 「あのね、怪談の本で読んだんだけど、ちがう場所に同じ人が現れるのは、ドッペルゲンガーっていって……」 「もう、カンベンしてください……。証明といえば……あ、あった証明できるもの! おじいちゃん、パソコンお借りします!」 「かまわないけど、うちのパソコンにキミの昨日のデータなんてはいっていないだろ?」 「昨日のぼくを呼びだすんですよ。FeliCa(フェリカ)ポートってついてましたっけ、あ、外付けだっけ」 「ああ、あの白い板みたいなヤツだな」 「そうそう、これこれ。ちょっとつなぎますよ」 パパはおじいちゃんが出してきた『FeliCaポート』とパソコンを接続しました。それから、ズボンのポケットから定期入れをとり出すと、Suica(スイカ)カードを取り出し、『FeliCaポート』の上にかざしました。 「よ〜し、FeliCa、行きまーす!」 |
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