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「あら、七海ちゃん。お帰り。本、買ってもらったのね」 「うん、駅前の本屋さん行ってきた! それでねぇ、おばあちゃんにひとつ、お願いがあってー……」 「はいはい、なぁに? 言ってごらんなさい」 「ほんとはね、七海、自由研究でやること、決めてたんだよね」 「みんながあんまりワァワァ言うから、言いそびれちゃったのね」 |
「あのね、おばあちゃん、はっぴ(法被)って作れる?」 「ああ、盆踊りで着るのね。はっぴは直線断ちで直線縫いばっかりだから、七海ちゃんだって、がんばればできるわよ」 「よかったー。それでね、ひとつやりたいアイデアがあって」 「どんなこと?」 「はっぴの背中にアイロンプリント、したいんだ。そのやり方をまとめて、はっぴを作品として自由研究にするの」 「それはいいアイデアね。アイロンプリントって、アイロンで絵柄を転写するのね」 「うん、自分で描いた絵を、パソコンのプリンタで印刷して、プリントするとその絵が布にうつるんだよ」 「ええと、そうするとアイロンプリント用紙が必要ね」 「うん、それも今、ママに買ってもらったよ。ほら、これ」 「どんな絵をプリントするの?」 「それは……、これなんだけど」 「まぁ、かわいい。パピーだわ。かわいく描けているわねぇ」 「1学期の図工の時間に描いたんだよ」 「そうすると……、これを、パソコンに取り込まないとダメねぇ」 「おばあちゃんとこ、スキャナーってある?」 「そういえば、おじいちゃんがやってるのを見たことがあるわ。ええと、うちのは、プリンターとスキャナーがいっしょになっているのよね。ここに絵を置いて、……このボタンを押すんだったかしら」 「あ、パソコンになにかでてきたよ」 「正解だったみたいね。ボタンを押すだけで、パソコンに自動的に取り込めるんだと思うわ。このぐらい簡単なら、私でも使えるわね」 「絵を取り込んだら、アイロンプリントの紙をセットして印刷するんだね」 「まってね……。ええと。プリントすると、絵柄が反対になるわけだから……」 「あー、そうか。布に重ねた面が逆になるんだもんね」 「プリンターのソフトのほうに、反転印刷っていうのがあれば……たぶんそれでできるんだけど……」 「あ、七海、もうひとつのやり方、知ってるよ。『ペイント』っていうソフト。まず、取り込んだ絵を保存して、その絵をペイントで開いて……。ソフトのメニューのとこに『変形』っていうのがあるでしょ。その中に『反転と回転』があるじゃん。それで『水平方向』を選んでOKってやると」 「あら、裏返しになった」 「これでプリントすればいいんだね!」 「七海ちゃん、すごいわね。あとは、アイロンすればいいのね。だけど、転写するのは、はっぴを仕上げてからのほうがいいのよ」 「どうして?」 「布の段階で位置を決めても、できあがると、微妙にズレたり印象がかわることがあるでしょう? 洋服の場合は、着てみて位置をきめるといいのよ。それに布にノリがついてたりすると転写がうまくいかないこともあるから、完成したものを一度お洗濯をしてから、アイロンプリントするのが一番失敗がないのよ」 「さすが、おばあちゃん! メモ、メモ! メモしなくっちゃ」 「ママが小さい時は、よく雑誌の付録についてきたアイロンプリントで、ハンカチとかにマンガを転写したものよ。手提げ袋とか、Tシャツなんかにもいいわね」 「七海もやりたーい。パピーのマークを作って、お道具袋とかハンカチに、みーんなつけようかな……。楽しそうー」 「その前に、はっぴを縫わないとね」 「うん。だからさっきのスケジュール表、毎日午後は、おばあちゃんとこにしておいたんだもん。途中の様子は、おじいちゃんに写真を撮ってもらおうと思って」 「あらあら、そういうことだったのね。それじゃ、さっそく明日は、型紙作りね。今日のところは、ここまでやったのを、撮影してもらわないとね。おじいちゃーん、来てくださいよ、カメラを持って……。これから毎日撮ってくださいよ!」 「おばあちゃん、ありがとー。これで盆踊りも夏休みの宿題もバッチリバンザイ♪ ドンドーンのドドンガドン♪」
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