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「おい、広一くん……我々はどこの駅で降りるんだっけ」 「あわわわ……す、過ぎちゃいましたよ」 どうやら、VoToLに夢中になっている間に、乗り過ごしてしまったようです。 |
「おばあちゃんもママも七海ちゃんもいない……。おいてけぼりをくったか。しかたない、次の駅で降りれば、ちょっと歩くが、公園の裏口にたどりつくぞ……」 あわてて降りる準備をしている二人の前に、いきなり一人の外国人が立ちはだかりました。 「Excuse me. Where is HARUYAMA park? Please tell me the station. Where go to ……」 「うわぁ、アイドントスピーク……は、ハロー」 「おい、広一くん。英語だ、英語。なんていってるんだ……」 「ぼ、ぼく、大学では中国語専攻で……ど、どうしたもんだか」 「そうだ、VoToLだ、VoToL」 「こんな時に、ドラマ見てるふりしてやりすごそうっていうんですか」 「なにいっとる! 困ってる人をほったらかしにはできん。君は知らないだろうが、こんなこともあろうかと……」 「えー? 知るわけないじゃないですか」 おもむろにVoToLのキャップを回したおじいちゃんは、メニュー画面で、日本とアメリカの旗のマークにあわせて、「Transpeech」(トランスピーチ)のマルチモードを選択しました。 「えーっと、なにかお困りですか? と」 おじいちゃんは、VoToLの丸いOKボタンを押しながら、自分の声を吹き込みます。すると、吹き込まれた言葉はまず日本語として認識されて、画面に表示されました。そこでOKを押すと、今度は英語に変換され、さらにボタンを押すと発音されるのです。 「Is anything in trouble?」 おじいちゃんは英語から日本語に翻訳できるシンプルモード(英→日)に切り換えてからVoToLを指さして、外国人ににっこりしました。使い方がわかったのか、VoToLに向かってゆっくりしゃべってくれます。 『春山公園に行きたいのですが...』 「あー、ちょうど私たちもそこにいくのです。『一緒に行きましょう』」 「Thank you!! 」 「いやいや、すごいでしょう! これ……。わはははは……」 身振り手振りも交えて、とても楽しそうです。 「あのー、そのー、電車のドア、また、閉まっちゃいましたよ。どんどん、公園遠ざかってます……」 「Oh! My GOD! What should I do!」 「閉まった? シマッタ! 急行だから次の駅まであと10分……どうしたらいいんだ!」 「それなら、さっきのドラマの続きを見てればバッチリ!ですね」 「君ひとりで、終点まで見ていけばいいだろ!」
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