「タコ飯いうたら生ダコちごて干しダコ使わんならん」。西二見にある漁業組合婦人部の大里千枝子さんがこう説明してくれた。水分がとんで、旨味がぎゅっと詰まった干しダコを使うことで、独特の香ばしさや風味、歯応えが生まれるという。
そのタコ飯は、作り方も独特。干しダコというのは一言で言えばタコの干物。新鮮なタコの内臓やエラ、スミをとり、頭と足の部分を開いて竹串をはめ込み、1日〜2日間ほど天日干しにする。それを調理する前に、直火であぶって柔らかくする。
あぶりだすと数分で、台所には香ばしい香りが漂う。「この匂いでご近所さんにタコ飯作ってることがバレてみんな集まってくるんよ」と大里さん。焼きあがった干しダコをはさみで刻み、米、醤油、酒、味醂などと一緒に炊飯器で炊き上げる。
ちなみに干しダコは、手間がかかるため、最近では作り手が減っている。市場では高いものだと1枚5000円もする。「本物のタコ飯を食べてもらいたい」と大里さんが考案した「たこめしの素」には刻んだ干しダコに、秘伝のタレが付いているので、家庭でも気軽に作れると人気だという。
このほか大里さんの食卓には、ショウガ醤油で食べる湯引き、酢の物、やわらかくて甘い天ぷら、子供のタコを使ったやわらか煮、パリパリとして酒のつまみにぴったりのタコチップス、タコの足がたっぷり入ったタココロッケなどが並んだ。おいしいだけでなく、タコにはタウリンという滋養強壮の成分が多く含まれ、栄養価も高いという。