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熊本名物といえば普通は馬刺し、辛子蓮根が思い浮かぶが、よそではほとんど知られていない名物料理がある。給食にもでるほどポピュラーな春雨料理、太平燕だ。栄養のバランスがよく、低カロリーなため、最近は健康食としても注目されている。 |
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太平燕はいわば春雨スープで、白菜またはキャベツなどの野菜に豚肉、エビなどを炒めた具を入れる。それに加え揚げたゆで卵「虎皮蛋」(フーヒータン)が入る。熊本市内では昭和の初めから中華料理店や家庭で食べられてきた。昭和40年頃からは給食にも取り入れられ、今も2か月に1度くらいででるそうだ。
「県外にないとは思てもおらんだったです。学校では給食にも出てたし……」。ホームページ「熊本太平燕倶楽部」で全国に太平燕を紹介した斉藤誠喜さんが言うように市民は全国どこにでもあるものだと思っていた。
市内にある創業70年の中華料理店、紅蘭亭の葉山栄司常務にそのルーツを聞いた。「明治33年(1900)に中国・福建省から来日した曽祖父たちが、昭和9年に開業した頃から太平燕は定番メニューです。本場の太平燕は、祝いの席などで食べる肉団子入りスープですが、熊本の太平燕はこれに春雨を加えて個食にするなど、華僑(かきょう)たちが身近な食材でアレンジしたおふくろの味なんです」。
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(上)一度にたくさん作る時は、ぬるま湯でもどした春雨をスープに入れておく
(下)春雨を入れたスープに炒めた具を入れて少し煮込めばできあがり |
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白濁したスープを一口すする。さっぱりしているが、具からだしが出ていてコクもある。春雨はこしがありぷりぷりとした食感。緑豆からとれるでんぷん100%の春雨なので、通常の春雨よりのびにくい。野菜と春雨にはスープがしみ込み、噛むほどに旨みが広がる。塩だけの味付けなので野菜や肉、海鮮など素材そのものの味が際立っている。
「栄養バランスがよくお腹にも優しいので風邪をひいた時や離乳食、高齢者の食事などにおすすめです。カロリーも少なかけん夜食にもよかよ」と友住さん。
東京にある熊本県のアンテナショップ、銀座熊本館でも太平燕を販売している。平成16年度の売り上げは前年の約3倍。熊本の“つばめ”は全国へと広まりつつある。
(文/中 文子 写真/藤山寛治) |