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大阪の中心、難波から南海高野線の特急「こうや」に乗りこんだ。40分ほどで紀ノ川を渡ると、山々が間近に迫ってくる。高野、大峰、吉野、熊野の霊場を抱える紀伊山地だ。電車はその山々の懐に入り込むように、濃緑の渓谷沿いをゆっくりと上っていく。
難波から1時間20分で終点の極楽橋駅に到着した。山深い。さらにケーブルカーで5分ほど上り高野山駅からバスに乗り継ぐ。数分で突然、高野町が現れる。町の中心、千手院橋バス停で降りた。
歩き出すとすぐに気が付くのが、寺と僧の多さだ。117もの寺院があり、僧は修行中も含めると1000人を超える。山上の人口は約4000人なので、4人に1人は僧ということになる。作務衣(さむえ)姿の若い僧が自転車に乗っていたり、下駄履きで買い物していたりという光景をそこかしこで見かける。その一人に高野山について尋ねると、「実は高野山という山はないんですよ」との返事。高野山は高野山真言宗の総本山金剛峯寺(ごんごうぶじ)の「山号」で、この一帯の総称だという。
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町はその金剛峯寺を中心に、標高900メートルの山上、東西4キロ南北2キロの平坦地に広がる。端から端まで歩いても1時間ほどなので、ぶらりと寺院から寺院をめぐっていけばよい。東西に目抜き通りが延び、その周りにひしめくように立つ寺と寺の間に挟まれて、土産屋や食事処、商店、住宅が窮屈そうに軒を連ねている。
寺だけが目立つようだが、実はこの小さな町には、無いものはほとんど無いという。あえて挙げれば、教会と映画館とパチンコ屋が無いくらいだそうだ。幼稚園から大学まであるし、警察、病院、銀行、コンビニもある。居酒屋やスナックなども多く、僧たちもよく利用するらしい。
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