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第8回 高野山(こうやさん) 和歌山県 高野町   弘仁7年(816)に弘法大師 空海が開いた聖地、高野山は、7月 で世界遺産に登録されて1年を迎えた。日本で唯一の宗教都市でも ある、山上の異空間を歩いた。
 
「実は高野山という山はないんですよ」
 大阪の中心、難波から南海高野線の特急「こうや」に乗りこんだ。40分ほどで紀ノ川を渡ると、山々が間近に迫ってくる。高野、大峰、吉野、熊野の霊場を抱える紀伊山地だ。電車はその山々の懐に入り込むように、濃緑の渓谷沿いをゆっくりと上っていく。
 難波から1時間20分で終点の極楽橋駅に到着した。山深い。さらにケーブルカーで5分ほど上り高野山駅からバスに乗り継ぐ。数分で突然、高野町が現れる。町の中心、千手院橋バス停で降りた。
 歩き出すとすぐに気が付くのが、寺と僧の多さだ。117もの寺院があり、僧は修行中も含めると1000人を超える。山上の人口は約4000人なので、4人に1人は僧ということになる。作務衣(さむえ)姿の若い僧が自転車に乗っていたり、下駄履きで買い物していたりという光景をそこかしこで見かける。その一人に高野山について尋ねると、「実は高野山という山はないんですよ」との返事。高野山は高野山真言宗の総本山金剛峯寺(ごんごうぶじ)の「山号」で、この一帯の総称だという。
「無いものはほとんど無い」
 町はその金剛峯寺を中心に、標高900メートルの山上、東西4キロ南北2キロの平坦地に広がる。端から端まで歩いても1時間ほどなので、ぶらりと寺院から寺院をめぐっていけばよい。東西に目抜き通りが延び、その周りにひしめくように立つ寺と寺の間に挟まれて、土産屋や食事処、商店、住宅が窮屈そうに軒を連ねている。
 寺だけが目立つようだが、実はこの小さな町には、無いものはほとんど無いという。あえて挙げれば、教会と映画館とパチンコ屋が無いくらいだそうだ。幼稚園から大学まであるし、警察、病院、銀行、コンビニもある。居酒屋やスナックなども多く、僧たちもよく利用するらしい。
 
「外国人も魅せられる高野山は宗教、自然、生活が調和する」
 地図をもらおうと立ち寄った千手院橋バス停前の観光案内所で、面白い人がいると紹介されたので訪ねてみることにした。案内所の近くにある無量光院(むりょうこういん)のスイス人僧、クルト厳蔵さんは高野山に魅せられ、ここで修行して8年になるという。普段は、英、仏、独、伊という堪能な語学を生かして外国人のガイドをしている。今では日本語も達者だ。
 案内を頼んで金剛峯寺へ向かった。無量光院から歩いて5分もかからない。歩きながら高野山の魅力を聞いた。「高野山は山の上で文化、宗教、自然、哲学、生活が調和している。こんなハーモニーは他の場所にない。町が人間の暮らしに合ったサイズなのもいいね」
荘厳な金剛峯寺を見学した後、クルトさんと別れ通りを東に向かう。途中、一軒の雑貨屋をのぞいてみた。町で唯一の本屋も兼ねており、雑誌のほかに密教入門や経典など仏教関係の本がずらりと並ぶ。
  外国人も魅せられる高野山は宗教、自然、生活が調和する
 熱心に本を探していた坊主頭の青年に声を掛けた。現在、高野山大学4年生、実家は神戸市にある寺だという。「家を継ぐために、高野山で同宿して勉強しています」。同宿とは、寺に下宿して寺の仕事を覚えながら大学に通うことだそうだ。
 後刻、昼時に精進料理を食べに立ち寄った遍照光院(へんじょうこういん)の住職、酒井道淳さんが面白い話をしていた。「最近の学生は町のアパートを借りて部屋に閉じこもってしまう。同宿は寺や歴史はもちろん、人付き合いを学ぶいい機会になる。高野山の中身の濃さを知らずに卒業する子が増えたのは残念や」。先ほどの神戸の彼に改めてエールを送りたくなった。
 ちなみに精進料理は予約制で、多くの寺で食べられる。3000円ほどで高野豆腐やこんにゃくの刺し身、野菜の煮物などが出る。肉や魚はなくても、しっかりとした味付けで箸が進んだ。
 
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