11月上旬、最終的に内定した台湾ベンダーを米沢に呼び、資材担当を交えた最終価格整合の詳細検討会が行われた。そこで、互いの意志や理解が合致しているかをチェックし、勘違いしている部分がないかどうかを確認する。
丸川 |
「ミーティングでは、互いに母国語は英語ではないのに、双方が英語でしゃべります。だから、誤解が生まれやすいんです。だから、ここはそうじゃないとか、こうしたいといったことを念入りに再確認します。もちろん、委託先ベンダにとっては、青天の霹靂的な仕様もありますね。必然的にコストアップの要求も出てきますが、そこは、資材担当に強くプッシュしてもらって、最終の仕様を詰めていきます。
そこで決まった内容を元に、要件書の次の段階の書類として、米沢のプロダクトマネージャがデベロップメント・プランニング・ドキュメントを作ります。私は、その内容が私たちの作った要件書と差異がないかどうかをチェックして、どこそこを修正してほしいといったことを彼に伝えます。そこまでで、私の仕事はおわりです」 |
このミーティングの前日、保谷と丸川は、一足早く米沢に向かい、二人で丸川の実家を訪れている。保谷は丸川家の家族に歓迎された。昼食は庭で米沢名物の芋煮を楽しみ、午後は紅葉狩りにでかけた。11月上旬である。残念ながら、紅葉を楽しむには、少し時期が遅すぎた。置賜を囲む山々はすでに冬支度を始めていた。その日の夜は、丸川の両親を交えた4人で新潟の地酒を酌み交わしたという。
1年近く、二人で助け合いながら関わり続けたプロジェクトが、ようやく製品化に向けて動き出そうとしている。丸川の役割はこのフェイズで終わり、彼女は次のプロジェクトに向かって、新たな歩みを始めることになる。 |