NECパソコンの歴史 前編 〜LaVie Z発売とパソコンの夜明け〜 ライター 山田 祥平

2012年 世界最軽量のウルトラブック 「LaVie Z」

2012年8月23日、NECパーソナルコンピュータ社は、13.3型のUltrabook「LaVie Z」シリーズの出荷を開始しました。新開発のマグネシウムリチウム合金を採用することで、クラス最軽量のPCとなることを予告していましたが、それがついに市場に投入されたことになります。しかも、重量は当初の999g以下を大幅に下回る875gを実現しています。13.3型液晶を持つモバイルノートとして正真正銘の世界最軽量※です。

NECのパソコンといえば、「安心・簡単・快適」がセールスポイントで、それを求めるユーザー層の期待を裏切らない製品群がそろっているのが定評です。「LaVie Z」には、「安心・簡単・快適」をしっかりと保持しながら、その上で、アッと驚く商品を提供したいという技術者の想いが込められています。そして、その想いのルーツは、NECパソコンが連綿とたどってきた短からぬ歴史に裏付けられているのです。
「LaVie Z」は、「世界一にならないくらいなら開発中止」とまでいわれながら開発が進められたそうです。現在のNECは、「安心・簡単・快適」をベースに、「驚きと感動」、「先行しての市場投入」、「世界一や世界初の技術」を商品企画や商品開発のメインテーマに掲げています。あのレノボとの合併からほぼ1年が経過し、そのシナジー効果は、さまざまな場面で発揮されているそうですが、そのシナジーを最大限に活かし、目に見える形に具現化した最初の製品が「LaVie Z」なのだそうです。まさに、新生NECレノボ・ジャパングループが最初に生み出した新しい時代のパソコンです。

※13.3型ワイド液晶搭載ノートPCとして。2012年7月3日現在、NECパーソナルコンピュータ調べ。

1976年 パソコンの夜明け「TK-80」

日本のパソコンの歴史はNECを抜きに語ることはできません。驚きや感動をスローガンとする姿勢は、何も昨日や今日始まったものではないのです。

「LaVie Z」からさかのぼること36年前の1976年8月。NECは「TK-80」という商品を世に問いました。「TK」はトレーニングキットの頭文字。トレーニングの対象はマイクロコンピュータ、略してマイコンです。マイコンはコンピュータの心臓部となっている半導体集積回路で、今では集積度も著しくあがり、コンピュータのみならず携帯電話から家電製品まで、さまざまな機器に搭載されるようになりました。「TK-80」の価格は88,500円、当時、大ヒットしたキヤノンの一眼レフカメラAE-1(81,000円で同年4月発売)とほぼ同額です。決して安くはありませんが、サラリーマンや学生にも頑張ればなんとか手の届く価格でした。

「TK-80」は、豊かな暮らし、便利な環境を実現するために、マイコンをどのように使ったらいいのかを考え、マイコンというのはいったいどのようなものなのかを学び、知ってもらうための教材だったのです。完成品にするよりも、自分で組み立ててもらえば、その仕組みをよりわかってもらえるだろうという狙いもありました。つまり、「TK-80」は、最初は技術者のためのマイコン学習用組み立てキットの位置づけだったのです。
でも、「TK-80」に夢を託したのは技術者ばかりではありませんでした。電卓などに内蔵されるマイコンを、もっと他の用途に使えないかを模索する一方で、ごくごく普通の人も、個人が持てるコンピュータに夢を感じ、未来に想いをはせたのです。そして、その想いが、その後のパーソナルコンピュータの歴史を作っていくのです。大ヒットした「TK-80」は、もともとのNECの思惑とはまったく異なるマーケットを作り始めていました。それは、ひとつのカルチャーの誕生ともいうべき瞬間でした。

ちなみに、この「TK-80」は、一般社団法人 情報処理学会から、平成22年度 情報処理技術遺産として認定されています。

1979年 NEC初の本格PC「PC-8001」

次のNECのチャレンジは、トレーニングキットを完成品にしてケースに納めたものを「PC-8001」として売り出すことでした。キットではなく、今度は正真正銘のパーソナルコンピュータです。発売は1979年9月。この製品がNECにとっての記念すべき初めてのパソコンです。

マイコンというデバイスのマーケットを拡大するための組み立てキット「TK-80」は、あくまでもデバイスビジネスのために考えられたものでした。つまり、NECが集積回路を売るための手段とした製品です。でも「PC-8001」は違います。「TK-80」を迎えた個人の熱い想い、そう、個人が使えるコンピュータが欲しいという人々の気持ちを敏感に感じ取ったNECが提供する、すぐに使える完成品としてのパーソナルコンピュータだったのです。
「TK-80」が発売された1976年は、キャンディーズが「年下の男の子」を大ヒットさせた年であり、ピンクレディがデビューした年でもあります。また、「PC-8001」が発売された1979年はソニーのウォークマンが発売された年です。テレビドラマではこの年に「3年B組金八先生」がスタートしています。
NECのモバイル端末 MobileGear

2011年、NECはAndroid OS搭載のスマートデバイス「LifeTouch NOTE」を発売しました。しっかりしたキーボードを持つタッチパネル搭載のコンパクトな筐体は、「MobileGear」の再来かと、ちょっとした騒ぎになったものです。

「MobileGear」は、1996年に発売されたMC-P1から始まるシリーズです。当初はMS-DOSを、途中からはWindows CEをOSとして搭載し、モバイル環境でもしっかりとしたキーボードで文字を入力したいというユーザーに「モバギ」という愛称で呼ばれ、高く評価され愛された製品です。また、NTTドコモからも、ゼロハリバートンデザインの筐体で、「シグマリオン」という製品名で発売されていた時期がありました。

モバイルといっても通信機能はモデムのみ。通信のためには別途、固定電話回線や携帯電話を調達する必要がありました。当時は、こうしたマシンのカテゴリは、ハンドヘルドPCと呼ばれていたのですが、今や死語となっているのはいうまでもありません。

MobileGear LifeTouch NOTE
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