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「おじさんも使うわけだから……」
パパは作業を続けます。
「この際だから、いままで見たホームページの履歴も消しておこうか」
「そんなことってできるの?」
「Internet ExplorerのURLが表示されてる窓の右端のボタンを押すと、ズラッとでてくるだろ。いやいや、Hなとこを見てるってわけじゃないけど……」
ブツブツ言っているママを横目に、パパは、メニューバーの「ツール」の中にある、「インターネットオプション」をクリックし、「全般」の中の「履歴のクリア」をクリックしました。
「それから……IEのオートコンプリート機能だな」
「なぁに、オートコンプリートって」
「以前入力した文字を表示して入力を助けてくれる機能さ。ほらこの前、検索した単語が残ってて、ママにチクチク言われちゃっただろ……」
「だって『女……』って入力しはじめたら、女子大生とかでてくるから」
「うう、また言われた……。入力した文字が候補として表示されるのは、毎回、同じ文字を打たなくていいから便利なんだけど、入力まちがいや、ヤバそうな単語は消しておこう」
検索窓に数文字入力すると、候補がウインドウででてきます。そこで上下キーを押して、表示された単語の中から消したい単語を選んで反転表示にし、キーボードのDelキーを押して消していきます。
「あとはIDだ。IDやパスワードって覚えにくいから、IDを入れると対になってるパスワードまで自動で入力されるのは助かるんだけど、こういう時は困るよなぁ。ログインすると、マイページがでてくるサイトとかもあるし、ネットの銀行も使っているからね。IDとパスワードのメモはとってあるから大丈夫だな」
同じく、ツールバーの「ツール」の「インターネットオプション」で、今度は「コンテンツ」の中の「オートコンプリート」で「オートコンプリートの設定」の「オートコンプリートの履歴のクリア」の中の「パスワードのクリア」を押します。
「こうすると、次に入力するのがとっても面倒なんだけど、しかたないな」
「ふーん、こうやって、消しているわけね」
「ううう、なんか墓穴を深くしている気分だなぁ。ええとそれから、キミの分のデータをバックアップして……やることいっぱいあるなぁ……トホホ」
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「はい、それじゃこれ、お貸ししますから。この『おじいちゃん』ていうアカウントで使ってください」
次の土曜日、パパはノートパソコンをおじいちゃんに手渡しました。
「おお、ありがとう」
「くれぐれもヘンなページとか見ないでくださいよ。ウイルスとかスパイウエアとかイヤですから」
「セキュリティソフトははいっているんだろう?」
「それでも用心してください。それからですね、使う時は、これをつないでください。これがUSBポートに挿してある時だけ、パソコンが使えるようになってます」
パパは、小さなUSBフラッシュメモリーもおじいちゃんに手渡しました。
「なるほど。宝箱のカギのようなものなんだな。両方そろわないと使えないって寸法か」
「会社で、席を離れる時に使ってる人がいたんで、教えてもらったんです。こうしておけば、誰かに本体だけ持っていかれても、そう簡単には使われませんからね」
「最近は便利な道具があるんだね」
「で、すいませんが、でかけてらっしゃる間、ここの家のパソコンをお借りしてもいいですか?」
「もちろんだよ。どんどん使ってくれたまえ。ママも使っていいからね」
「ほんとにおじいちゃんは、おおらかねぇ。恥ずかしいページが履歴に残ってたりしないの?」
「なに言ってる。そういうのは、どんどんお気に入りに登録するんだ。堂々としたもんだろ。」
「うーん、このおおらかさはかないませんね。ノートパソコン、心配だなぁ」
(文・波多野絵理 イラスト・工藤六助)
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