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「いただきます……」
「どうしたの、春菜。食欲なさそうねぇ。この鮎、春菜さんが好きな天然ものよ」
椎名さん一家は広一パパと春菜ママ、そして小学校二年生の七海ちゃんの三人家族。土曜日にはいつも、ママの実家で、お昼ごはんをいただきます。ところが、今日はなんとなくママの様子がごきげんななめ。好物のおかずにも箸が進みません。
「鮎といえば、おばあちゃん、私の中学時代の担任の先生、覚えてる?」
「生物の先生なのに、お料理が得意だった変わった人ね。その先生がどうかしたの?」
「中学校を退職されて、鮎料理の和食料亭をはじめたそうなのよ。今度そのお店で同窓会を開こうと思っているの」
「それはいいわねぇ。誰かから連絡がきたの?」
「真弓ちゃんからメールをもらったの。仲良しだった四人で幹事をやろうって相談しているんだけど」
「家によく集まっていた、あの美人四人組ね。真弓さんて結婚して遠くに引っ越ししたんじゃなかったの?」
「そうよ。でも、電話番号が変わっても、メールアドレスは同じだったから、ずっと連絡しあっていたの。そろそろ細かいところを相談しないといけないんだけど」
「あー、そしたら、今度ぜひ、ウチにも来てもらって……」
「もーパパったら、美人て聞くと、いきなりこれだから。だいたいあなた宛のメールが多すぎて、肝心の連絡メールが埋もれちゃって困ってるのよ。それもなんだかHな件名のメールばかり」
「え、え、え?」
「あらあら、せっかくママのご機嫌、直りかけていたのにねぇ……」
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「Hなメールなんて、誤解だよ誤解。それは出会い系かなんかの無差別広告だよ。迷惑メールって聞いたことあるだろ。なんとかひっかけようと、刺激的なタイトルで送ってきてるだけだよ!」
「もー、本当に迷惑ね。届かないようにしてよ」
「無理だよ。勝手に届いちゃうんだから。届かないようにいろいろやっても、100%大丈夫ってことはないよ。送ってくるほうはものすごく巧妙だから」
「なにかいい方法はないの?」
「うーん、メールが埋もれて困るなら、無料のレンタル掲示板を使ってみたらどうかな。書き込まれた内容が残っているから、あとから参加した人も流れがわかって便利だよ。時間があるときに見に行けばいいし」
「だけど、知らない人に見られたりしない?」
「そうだね、くれぐれも名前や連絡先みたいな情報は書きこまないことだね。パスワードの設定ができて、知ってる人だけが使えるところもあるけど、それでも用心しないとな。そういえば、ぼくが同窓会をやった時は、登録制のホームページを使ったよ。ほら、ここ。「ゆびとま」っていう学校ごとにコミュニケーションできるホームページだよ」
「へぇ、自分の学校を登録するのね」
「『mixi』(ミクシー)や『gree』(グリー)なんていう、招待された人しか使えない会員制のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)っていうネットサービスもあるよ。同じ学校の出身者どうしでコミュニケーションするグループがあったり、招待した人たちで自分たちだけのグループを作ってもいいんだ」
「会員制のサイト? あなた、やっているの? ちゃんと私も招待してよね」
「はいはい、仰せのままに」
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