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小泉武夫の食味学 「桧山納豆」
 毎朝食卓に顔を出す、ネバネバと粘りのある納豆を「糸引き納豆」とも言うが、その歴史を語るものは、意外に秋田県に集中している。
  俗説だけれども、八幡太郎義家が秋田地方に出征したときに、糸を引く豆をその家来が農家で発見して持ち帰ったとか、京から行った官人が秋田の農家の神棚で見つけて持ち帰ったとか、さらには水戸の殿様のお姫様が、秋田の若殿様のところに嫁入りし、その縁で秋田の納豆が水戸に伝わったとか、とにかくこの種の話が多いのだ。
  その秋田県でも、民謡「秋田音頭」にも唄い込まれるほどの名物が、名品桧山納豆である。江戸時代の文化文政のころ、小西又四郎という人がその製法を考察したという伝えも残っている。だから、別名を「又四郎納豆」といい、その製法での納豆は昭和初期まで続いた。
桧山納豆
 
桧山納豆  とにかくユニークなつくり方で、煮豆を仕込んだ藁苞(わらつと)を木箱に詰め、そこにおが屑をどっぷりと掛けてから、蓆(むしろ)で覆い、さらに重石をして2〜3日間発酵させて出来上がりである。
 発酵学からみると実にユニークで、しかも理に適った発酵法である。これではきっと美味い納豆が出来たであろう。一時、この製法は途絶えたが、再び一部で昔通りに復活されたというニュースが伝わってきたときには嬉しかった。
 納豆は今日、美味しいだけでなく、その保健的機能性(血液をサラサラにする、血栓を溶解する、血圧を平常に保たせる、中性脂肪を低下させる、整腸作用がある、など)が次々に解明されてきて、国民的な発酵食品へと発展してきた。
 大いに納豆を食べて、これからの人生、納得よ。
 
【桧山納豆】
電話番号 0185-58-5046
営業時間 8時〜17時
休日 日曜・祝日
小泉 武夫(こいずみ たけお)
東京農業大学教授(醸造学・発酵学)。NHK国際放送番組審議会委員、日本東京スローフード協会会長などを務める。『不味い!』(新潮社)など単著82冊。
小泉武夫
 
INFORMATION 〜その他能代周辺の観光情報〜
樽冨かまた 樽冨かまた
0185-58-5046、8時〜17時、日曜・祝日休
樽冨かまたは、樹齢200〜250年の天然秋田杉を使う秋田杉桶樽の製造販売元。鎌田勇平さんは伝統工芸士にも認定され、ビアマグやジョッキなど、創造性豊かな作品作りにも取り組んでいる
   
喜久水酒造 喜久水酒造
0185-52-2271、8時30分〜17時、土・日曜・祝日休(事前予約をすれば見学可)
喜久水酒造では、能代市と二ツ井町の境にある奥羽本線の旧鶴形トンネルを貯蔵庫として利用。約100メートル_のレンガ造りのトンネル内は、気温11度。国の登録有形文化財でもあり、予約をすれば見学できる
クリックすると拡大地図が見れます
 
【問い合わせ】 能代市商工港湾課 0185-89-2186
【交通】 奥羽本線東能代駅からタクシーで5分/秋田道能代南ICから国道7号線、県道4号線経由約20分
 
(旅行読売2004年4月号より)
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