暑くなると冷たいものを摂りたくなるのは人の自然の要求である。夏の日本の食卓には昔から「冷物(ひやしもの)」がとても多くあったのは、この国は温帯気候地帯でとにかく夏は暑い。そこで冷たいもので体も心も癒そう、との食文化のひとつでもあるのだ。冷奴(ひややっこ)、水貝(みずがい)、冷麦(ひやむぎ)、白玉(しらたま)、水羊羹(みずようかん)、心太(ところてん)、掻(か)き氷など幾つもある。
「冷汁(ひやじる)」(冷や汁)もそのひとつで、味噌やすまし汁などを、その器とともに冷やしたものを指すが、正統なものは鳥肉や鯛を焙(あぶ)り、細末にしたものを汁味噌(しるみそ)の中で煮抜き仕立てにし、生姜(しょうが)、茗荷(みょうが)、浅葱(あさつき)、焼味噌、すり胡麻などを加えてから冷やしたものをいう。夏ばかりでなく、調理法に応じて四季いずれにも用いられ、日本料理の流派のひとつである四条流には「十二冷汁」という法式まである。女房詞(にょうぼうことば)(隠語の一種で宮中の女官らが使った)では「ツメタオシル」という。
江戸時代の『庖丁聞書』や『料理物語』には、鳥肉や鯛肉を焙り、細末にして汁味噌の中に入れて煮抜き、その汁に生姜、茗荷、浅葱、甘海苔(あまのり)などを入れる、とある。冷や汁に使う味噌を一度焼くことも教えているが、それは風味を出すためである。
さて、宮崎県西都市の冷や汁は、江戸時代の本流のものとは造り方を異にした、地域的発想によるものであろう。肉は使わず、魚のいりこ、豆腐、味噌がタンパク質、胡麻、ピーナッツが脂質、シソ、キュウリ、玉ネギが薬味となっている。これらの材料は、栄養学的、調理学的にみて実に知恵が深い。スタミナ不足を補う夏にあっては、誠に栄養のバランスが整い、特に豆腐を使うあたりは妙で、この冷や汁から摂取できるタンパク質の量は、肉を使った場合より勝っている。
また、体によい不飽和脂質やビタミン、ミネラル類も豊かに期待できる。そして、その汁を麦3対米7の麦飯(むぎめし)にぶっかけて食べる術(すべ)には脱帽ものだ。しっかりと炭水化物も摂っている。このような知恵の冷や汁は、ぜひ次の世代にも伝え続けて欲しい。 |
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【新宿みやざき館KONNE】 |
電話番号 |
03-5333-7764 |
営業時間 |
11 時〜 21 時 |
休日 |
無休 |
新宿駅南口からすぐ。冷や汁定食( 525 円)が食べられるほか、冷や汁の素を常時8種類(75グラム157円〜)そろえている。地方発送も可(送料別) |
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東京農業大学教授(醸造学・発酵学)。NHK国際放送番組審議会委員、日本東京スローフード協会会長などを務める。『不味い!』(新潮社)など単著82冊。 |
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第三小畑
0983-43-0058/11時〜14時、17時〜22時/不定休/交通=日豊本線高鍋駅からバス20分、本町下車すぐ/東九州道西都ICから約5分
■西都市の中心部にあるレストラン、第三小畑の冷や汁定食(松1790円)。ここの冷や汁は、うらごしした豆腐を使うのでなめらかでクリーミー |
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西都原古墳群(さいとばるこふんぐん)
0983-41-1557(西都原ガイダンスセンターこのはな館/月曜休/9時〜18時)/見学無料/西都原考古博物館は入館無料で10時〜18時、月曜と休日の翌日(土、日曜、祝日を除く)休/このはな館内のレストラン「旬彩家」では9月末くらいまで冷や汁定食(750円)もだす(ランチ11時〜16時)/交通=日豊本線高鍋駅からバス40分、西都バスセンター下車タクシー10分/東九州道西都ICから約10分
■4〜7世紀頃の古墳が311基点在する国の特別史跡、西都原古墳群。敷地内には体感型の西部原考古博物館がある |
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国民宿舎 石崎浜荘
0985- 73-1913 /日帰り入浴大人 500 円/ 1 泊 2 食 7345
円〜/交通=日豊本線佐土原駅からタクシー7分/宮崎道宮崎 IC から約 40 分
■佐土原町にある国民宿舎石崎浜荘。強食塩泉の湯が湧き、日帰り入浴もできる。大浴場からは日向灘を一望する |
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