深川(今は江東区に入る)には、アサリやハマグリなどの貝類を専門に漁(あさ)る貝漁師の家が沢山あって、それを売ってもいた。そこで入手したアサリで料理したところから「深川めし」となった。
江戸時代から明治、大正を経て昭和初期まで、今の浅草の田原町あたりには、深川めしを食べさせる屋台が数多く出ていたという。
当時の料理法は、豆腐、油揚げ、ネギを刻んでそこにアサリのむき身を入れ、味噌で煮込んだものを丼飯(どんぶりめし)にぶっかけて食べる簡易なものであった。
その後、醤油、酒などで煮付けたアサリを飯に炊き込む、アサリ飯も「深川めし」と称した。
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江戸後期の喜多川守貞の『守貞漫稿』や、式亭三馬の『浮世風呂』を見ると、深川では大量のアサリがとれていたので、とても安価で、従って深川めしは江戸庶民向けの格好の食べものだった、と記されている。
この深川めしには、江戸庶民の知恵も織り込まれていた。アサリやシジミは大変滋養成分に富んだ食材で、これを食すると疲労を去り、また肝臓の機能回復が図られる、と昔から言われてきた。
実はこれは本当のことで、アサリやシジミには疲れをとり、肝機能を活発に蘇させるタウリン、ベタイン、グリコーゲンなどの活力成分が多い。
また馬力のもととなる必須アミノ酸を多含し、さらにビタミンA、B、B2、B6、C、D、H、葉酸、コリンなどのビタミン群も豊富で、その上、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄分、ヨード、亜鉛、銅、コバルトといった、人間が正常体で健康に過ごすために不可欠必須のミネラル群も非常に多く含まれている。
それを、江戸人は体験で知って、主食の飯とともに美味にしながら体に入れた知恵の深さにはまったく恐れ入る。
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東京農業大学教授(醸造学・発酵学)。NHK国際放送番組審議会委員、日本東京スローフード協会会長などを務める。『不味い!』(新潮社)など単著82冊。 |
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深川宿(本店)
03-3642-7878/11時30分〜ラストオーダー19時(日曜、祝日はラストオーダー17時)/月曜、第3火曜休(祝日の場合は翌日休)/地下鉄半蔵門線、大江戸線清澄白河駅A3出口から徒歩3分/首都高速清洲橋出口から清洲橋通り経由約10分
■みそ仕立てのぶっかけ丼、深川宿の深川めし(1890円)
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深川江戸資料館
03-3630-8625/9時30分〜入館16時30分/第2、4月曜休(祝日の場合翌日休)/地下鉄半蔵門線、大江戸線清澄白河駅A3出口から徒歩3分/首都高速清洲橋出口から清洲橋通り経由約10分
■天保年間(1830-1844年)の深川の町並みを再現した深川江戸資料館。パネルで江戸時代の深川の歴史も紹介 |
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富岡八幡宮
03-3642-1315/境内自由/地下鉄東西線門前仲町駅1番出口から徒歩3分/首都高速木場出口から約3分
■応神天皇を祭る朱塗りの富岡八幡宮は深川の木場を中心に信仰を集めた。江戸勧進相撲発祥の地でもあり、境内には横綱力士碑が立つ |
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