秋田県の名物「きりたんぽ」は元々、冷飯（ひやめし）の料理法として工夫されたものだが、今では普通の料理として客膳にも供せられるようになった有名な郷土料理である。 　日常食の飯を擂鉢で搗（つき）潰し、粘りが出てきたところで細竹に塗りつけ、炭火でこんがりと焼く「たんぽ」（蒲英）の姿は、信州、飛　、三河の一部に見られる「御幣（ごへい）餅」と同工異曲で、起源は相当に古い。 　昔はその焼き「たんぽ」に胡桃（くるみ）味噌や胡麻（ごま）味噌、山椒（さんしょう）味噌を塗っただけのものであったが、それが鍋料理的な方向に歩みだしてからは、御幣餅と袂（たもと）を分けた。 　始めは温め返しの味噌汁や冷や汁の中に入れていたのであったが、そのうちに、雑煮感覚が入って、鍋にさまざまな地産の具を入れた本格的な料理に進化していく。今では鶏肉（有名な比内地鶏などが使われる）、ネギ、セリ、刻みゴボウ、焼豆腐、茸（きのこ）類などが入って、それこそ誠に立派な鍋料理となった。   　「きりたんぽ」は、栄養的に見れば実に優れた食べものである。鶏肉（昔は干魚も使ったという）や豆腐からはしっかりとタンパク質が摂取でき、棒状飯である「たんぽ」からは炭水化物が豊かに得られ、また、さまざまな野菜や茸からは確実に多量の繊維質が体に入ってくる。 　とりわけ、繊維質の摂り方が優れていて、さまざまな出汁を吸った美味な野菜類を沢山食べれるので、実に理想的である。 　体に多量の繊維質が入ると、胆汁酸の分泌を多くして、脂肪の分解や血中のコレステロールや老廃物の過剰を抑えるのに効果的であるばかりでなく、腸管を清掃し、有益な腸内細菌を多く増殖させて、お通じもよくなるのである。 　昔の人は体験的によくその辺りを知っていて、例えばセリを使うにも決して繊維質の塊（かたまり）である根茎などは切り取らずに鍋に放り込んだ。 　稲作民族日本人の考えた稀に見る健康鍋である。     東京農業大学教授（醸造学・発酵学）。NHK国際放送番組審議会委員、日本東京スローフード協会会長などを務める。『不味い！』（新潮社）など単著82冊。   鹿角観光ふるさと館あんとらあ 0186・22・0555／9時〜17時（観光センターは18時まで）／無休／花輪線鹿角花輪駅からタクシー3分／東北道鹿角八幡平ICから国道282号経由約3分 ■鹿角観光ふるさと館あんとらあでは、たんぽの手作り体験（１串２００円）が楽しめる     割烹美ふじ 0186・23・5771／18時〜24時／不定休／花輪線鹿角花輪駅から徒歩10分／東北道鹿角八幡平ICから国道282号経由約5分 ■加藤さんが経営する割烹美ふじのきりたんぽ鍋は１８００円（１０月〜５月、要予約）     村の駅トプカイ 0186・47・7030／売店9時〜18時、レストラン11時〜17時／無休／花輪線土深井駅から徒歩10分／東北道十和田ICから国道103号線経由約5分 ■秋田比内やの農場長・柳沢秀雄さん（左）と柳沢弘治さん（右）。秋田比内やでは、比内地鶏を使った様々な料理が味わえる、村の駅トプカイも運営している     大湯環状列石 0186・37・3822（大湯ストーンサークル館）／9時〜16時／月曜（祝日の場合は翌日）休／300円／花輪線十和田南駅からタクシー15分／東北道十和田ICから国道103号線経由約15分 ■祭祀用に使われていたともいわれるストーンサークルは、縄文時代の歴史を物語る貴重な資料だ     マインランド尾去沢 0186・22・0123／9時〜17時／無休／共通観覧券1700円／花輪線鹿角花輪駅からタクシー1５分／東北道鹿角八幡平ICから県道66号線経由約15分 ■日本三大銅山と称えられた尾去沢鉱山で金や銅の精錬に使うために必要な木を切り出すのに、鹿角の山子たちが活躍したとか。鉱山は昭和53年に閉山されたが、昭和５７年にマインランド尾去沢という地底博物館として蘇った     荒瀬公衆浴場 0186・37・2960（大湯温泉観光協会）／6時〜21時／無休／240円／花輪線十和田南駅からタクシー25分／東北道十和田ICから国道103号線経由約25分 ■市内にあ４か所ある共同浴場の1つ、荒瀬公衆浴場。ナトリウム・塩化物泉の湯があふれている     田園市場秋田美人 0186・32・2211／8時〜17時／無休／花輪線鹿角花輪駅からタクシー5分／東北道鹿角八幡平ICからすぐ ■日本おみやげアカデミーでグランプリを受賞した田園市場秋田美人のきりたんぽ体験日記（１８００円。地方発送可）。きりたんぽ鍋作りの道具や材料がセットになっている   ※クリックすると拡大地図が見れます。     （旅行読売2004年12月号より）   バックナンバー 第10回「列島雑煮マップ」 第9回 「阿波和三盆糖　徳島県上板町」 第8回 「村上の塩引き鮭 新潟県村上市」 第7回 「きりたんぽ鍋 秋田県鹿角市」 第6回 「太平燕（たいぴーえん）熊本県熊本市」 第5回 「深川めし 東京都江東区」 第4回 「タコ飯 兵庫県明石市」 第3回 「山人料理 福島県檜枝岐村」 第2回 「冷や汁 宮崎県西都市・佐土原町」 第1回 「桧山納豆 秋田県 能代市」 ページトップへ     ｜あなたの健康旅行結果発表｜旅行読売新刊紹介｜トップページ｜