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小泉武夫の食味学 「三面川の塩引き鮭」
 鮭は日本では、古くから東北および日本海側一帯の河川で遡上するものが漁獲され、重要な蛋白食となってきた。季節的な遡上という定期漁獲物の存在は、縄文文化社会の一つの基盤であったという学説まである。
 すでに奈良時代の多くの風土記に、その名所や食法が記されており、平安時代の『延喜式』に至っては、誠にもって詳しく鮭の食文化が記述されている。
 したがって日本各地の名産地には、この魚を祀る「鮭神社」や、鮭の供養塚をよく見ることができる。
 鮭は頭から尾の先まで全て食される魚で、昔はあまりにも遡上数が多く、これが保存法として塩引き鮭をつくる道に通じた。
 
 蛋白質が豊富な上に脂肪や無機質も多含されているので実によく食べられ、稲作民族の日本人に、一方では魚食民族としての位置付けも為してしまった。鮃(はららご)・(卵巣で筋子やイクラのこと)や白子(しらこ)まで美味なので珍重され、また内臓なんぞまで塩辛にして保存食とした。
 三面川の鮭の記述も大層古く、聖武天皇との関係まで記述している古文書もある。江戸時代の『料理山海郷』に三面川の塩引き鮭の詳しい製法が述べられているが、現在の製法もほぼこれと同じで、その伝統は頑(かたく)なに守られてきた。
 だから三面川の塩引き鮭は、今でも他の地方で行われている新巻鮭とは全く製法が異なり、時間と手間をかけ、実にスローフード的な感覚で行われている。
今、日本の新巻鮭の多くが、ただ塩を塗(まぶ)しただけの味けないものとなった中で、北海道の一部で伝わっている「山漬け」と並んで、実に貴重なつくり方を今に残す三面川塩引きこそ、日本人が心から求める本当の塩引きである。

鮭
 
 
小泉 武夫(こいずみ たけお)
東京農業大学教授(醸造学・発酵学)。NHK国際放送番組審議会委員、日本東京スローフード協会会長などを務める。『不味い!』(新潮社)など単著82冊。
小泉武夫
 
INFORMATION 〜新潟県村上市周辺の観光情報〜
割烹吉源 割烹吉源
0254-52-2155、入店時間11時30分〜13時、17時〜19時、不定休
■創業180年の吉源の吉田昭一郎さん。塩引き鮭は正月頃が食べごろ。 吉源の酒びたしは酒の肴としてはこれ以上ない逸品
   
山上染物店 山上染物店
0254-52-3570、9時〜18時、不定休
■村上のお茶で染めた小物などが並ぶ山上染物店。玄関から一直線に延びる土間のある町屋造りが特徴 
   
割烹千渡里 割烹千渡里
0254-53-6666、入店時間11時〜13時30分、17時〜22時30分、日曜休
■鮭料理を気軽に味わえる割烹千渡里
   
イヨボヤ会館 イヨボヤ会館
0254-52-7117、9時〜16時30分、無休(12月28日〜1月4日休)入館料600円
■「魚の中の魚」を意味するイヨボヤの名を冠したイヨボヤ会館は、日本最初の鮭の博物館
   
九重園 九重園
0254-52-2036、8時〜18時、無休
■創業200年の九重園。
村上はお茶づくりの北限。日照時間が静岡の3分の1しかないことが、茶の渋みを和らげるという。
   
味匠喜っ川 味匠喜っ川
0254-53-2213、9時〜18時、無休(元旦休)
■味匠喜っ川では、紫外線があたらないようにと、建物内の天井に吊るす。 味匠喜っ川の塩引き鮭右下の5切れ入りは5100円。下の酒びたしは1000円。地方発送もする
 
クリックすると広範囲の地図が見れます。
※クリックすると拡大地図が見れます。
 
 
(旅行読売2004年2月号より)
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バックナンバー
第10回「列島雑煮マップ」

第9回 「阿波和三盆糖 徳島県上板町」

第8回 「村上の塩引き鮭 新潟県村上市」

第7回 「きりたんぽ鍋 秋田県鹿角市」

第6回 「太平燕(たいぴーえん)熊本県熊本市」

第5回 「深川めし 東京都江東区」

第4回 「タコ飯 兵庫県明石市」

第3回 「山人料理 福島県檜枝岐村」

第2回 「冷や汁 宮崎県西都市・佐土原町」

第1回 「桧山納豆 秋田県 能代市」


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