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和三盆糖の製法は、中国から技術輸入した唐(から)三盆の流法で、江戸享保の頃から四国でつくられはじめた。讃岐(今の香川県)や、隣国阿波(今の徳島県)の特産となり、それぞれ讃岐白三盆、阿波和三盆として歴史的にもその名を知られながら発展し、今は阿波和三盆が吉野川沿岸の板野郡が主産地となって、家内工業的に生産されている貴重な砂糖である。
とにかく、甘蔗(かんしゃ)(さとうきび)から搾り取った糖液を、釜で煮て灰汁をとり、さらに煮詰めて得た白下糖から蜜をとるために、木綿袋に入れて押槽(おしぶね)で圧搾。それを少しの水を打っては揉み、搾ってはまた揉むこと数日。いやはや誠にもって根気と手間のかかる作業で、精根も尽きるのである。 |
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こうして、白下糖から取れる三盆糖はその三分の一しかならず、甘蔗を搾って出来上がるまでの約二十日間は、ほとんどが砂糖に付きっきりで、睡眠もろくに出来ないというから、大量生産という訳にはいかず、稀少価値が尊(たっと)ばれているのである。若し「食の世界遺産」というものがあったならば、堂々と推挙できるほどのものだ。
阿波和三盆は、一種独特の風味を有し、最大の特徴とする木目の細かい粒子は、絶妙な粘調性を持つことになり、各種の菓子に使われると、それぞれに赤児の肌をさわったかのような感じとなる。それが味わう人の舌の上で至妙な風味と絶佳な感触として広がるのである。
和三盆は含蜜糖であるので、通常の白砂糖よりも天然成分が多く、カリウム、カルシウム、リンといった無機質(ミネラル)や、甘い香りを構成する香気成分も多含していて、それらが独特の風味を作り上げている。阿波和三盆糖を用いるか否かによって、和菓子の評価が定まるのだから、誠にもって幻の砂糖である。
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東京農業大学教授(醸造学・発酵学)。NHK国際放送番組審議会委員、日本東京スローフード協会会長などを務める。『不味い!』(新潮社)など単著82冊。 |
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岡田製糖所
088-694-2020、8時〜17時、日曜、祝日休(売店は無休)
■岡田製糖所でも、お店で売る分だけの型物(干菓子)などを作っている。さまざまな型物(詰め合わせ500円〜、地方発送も可)。つなぎも色素も一切使っていないので、和三盆糖そのものの味がする。 |
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技の館
088-637-65550、10時〜18時、月曜休、入館無料
■岡田製糖所から徒歩2分ほどのところにある「技の館」に復元された「締め小屋」。昔は砂糖作りは農家の副業でもあった。締め小屋の内部には、牛を使ったサトウキビ搾りのようすを再現。岡田製糖所ではこの工程にだけ機械を使う。技の館では和三盆糖を使ったソフトクリーム250円やアイスクリーム350円なども販売している
【問い合わせ】
上板町産業課 088-694-3111
【交通】高徳線板野駅からタクシーで15分/徳島道土成ICから約5分
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