|
|
温泉入浴でも、一般の公衆浴場、家庭の入浴でも、そのルール、マナーで大切なことはまず「かけ湯」です。
テレビの影響でしょうか?脱衣所で裸になり浴室に入ると、そのまま浴槽にザブンと飛び込む人が最近多く見られます。
入浴の始めは、「かけ湯」「かかり湯」からです。多くの浴客が入る浴槽には、体をまず流して清潔にして入るという公衆衛生上の意味があるのです。 |
現在、問題になっているレジオネラ菌属の浴槽混入は、利用者が外から持ち込む機会が多いのです。レジオネラ菌属は、ビルの多い街の空気中、湿気の多い川辺、コケのむした場所などに常時存在する菌属です。それが浴槽に持ち込まれ、浴槽の清掃がゆきとどかない施設で問題が起こるのです。
したがって、浴槽に入る前には必ず「かけ湯」をします。汚れやすい足元から湯をかけ、徐々に腹、肩へと湯をかけていきます。またはシャワーで湯にかかります(かかり湯)。そして最後に、頭から湯をかぶります(かぶり湯)。
もうひとつは、「かけ湯」、「かかり湯」、「かぶり湯」で入浴の事故を防ぐためです。 これから入る湯の温度に体を慣らすためで、突然、湯に飛び込むと、その温度と水の圧力で血圧が30から50も急上昇します。高血圧、動脈硬化症、糖尿病の人など血管がもろい人は、脳出血を起こすことが多いのはこのためです。 |
この事故を防ぐために、冷えた足元から十分な「かけ湯」をします。 その際、特に42度以上の高温浴には注意です。この場合はまず頭から湯をかぶります。頭の血管をあらかじめ「かぶり湯」で拡張しておけば、急な血圧上昇をうまくいなせるわけです。
今では草津温泉の観光名物となった入浴法「時間湯」での「かぶり湯」は、このためです。 湯長の合図で、浴客は湯もみ唄を歌いながら、47度の湯を大きな板でかき回します。約20分ですから、かなりの人は脱落します。頃合いを見て湯長は号令をかけると、板を置いて柄杓で頭に熱い湯をおよそ30杯かぶります。次いでまた湯長の掛け声でゆっくり半身浴から全身浴で、3分経つと一斉に飛び出るという浴法です。
鳥取県の岩井温泉では、「湯かむり音頭」を唄っての「かぶり湯」があります。
(2004年旅行読売12月号より) |