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夕方もう一度、黒門市場へ戻る。「日が暮れるとまた雰囲気がちゃうで」。朝、鮮魚店の主人に聞いた言葉が気に掛かっていたからだ。
確かに午前中とは違い、板前さんや業者衆の代わりに、小料理屋の女将だろうか、割烹着姿の女性や買い物かごを提げた“おばちゃん”たちの姿が目に付く。市場の片隅には、手垢で真っ黒になった駒を手に将棋盤を囲む近所の“おっちゃん”たち。庶民的としか言い様がない。
「息子と孫が来よるさかいな、奮発したろ思うて。高いもんほどここで買(こ)うたほうが安心やから」。店先でズワイガニを5ハイも注文していた主婦、北川さんは笑顔を見せる。市場のすぐ裏手に住んでいて、「買うもんがのうても、つい毎日来てまう」そうだ。
黒門市場は半径1キロ以内に住む客が7割を占めるというが、最近では全国の自治体からの視察が相次ぎ、観光客の数も増えている。10月には韓国など外国のメディアも取材に来た。これも“ほんまもん”効果だろうか。市場の振興組合の額田隆晴さんは、「視察に来た人も観光客も黒門に来ると元気になると言うてくれる。それでもっと買ってくれたらええねんけどね」と笑う。
帰り、土産用に干物をひとつ買った。「おおきに! また来てやっ」。肩ごしに飛んできた声の響きが快かった。
(文/熊崎俊介)
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【交通】地下鉄御堂筋線なんば駅下車徒歩10分/車の利用は適さない
【備考】ボランティアガイドなし
【宿泊】難波地区にホテルなど約30軒
【問い合わせ】黒門市場商店街振興組合
Tel 06-6631-0007、大阪市ビジターズインフォメーションセンター難波 Tel 06-6643-2125
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(2005年旅行読売1月号より) |
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