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松蔭神社を後にし、旅の締めくくりに訪れたのは松蔭の誕生地。少し坂を上り、歩いて 20 分ほどだ。生家跡を示した土台があるだけだが、眼前が開け市内を一望。松蔭も三角州に開けた城下町と、その向こうに広がる日本海を眺めて少年期を過ごしたのだろう。
すぐ脇には一族の墓所も隣接しており、今も訪れる人が後を断たない。安政 6 年、 30 歳で刑死した松蔭の墓前で手を合わせていたのは、神戸の高校で教鞭をとる歴史の先生。萩は初めてだという。「松下村塾の塾生は恵まれていたと思う。尊敬できる先生がいて、国を変えるという信念と情熱があった。今の子どもは、自分の国にも無関心だし、情熱を傾けるものもない。尊敬できる先生もいないようだしね。萩に来て、教育を考えるいいきっかけになった」と話す。
再び歩き出すと、墓地の前の駐車場にひっそりと立つ石碑に気づいた。 50 年ほど前に萩を訪れた歌人、吉井勇の歌が刻まれている。
萩に来てふとおもへらくいまの世を 救はむと起つ松蔭は誰
半世紀を経た今も色あせないその問いに思いをめぐらせ、駅へと向かう坂道を下りていった。
(文/熊崎俊介) |
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【交通】山陰本線東萩駅下車/山陽道防府東ICから国道262号線経由約1時間10分、松陰神社前に無料Pあり
【備考】ボランティアガイドあり(要予約、交通費1000円〜)。また、主要な観光スポットにもボランティアガイドが常駐している
【宿泊】市街地に宿約30軒
【問い合わせ】萩市観光課 TEL 0838-25-3139 |
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(2004年旅行読売10月号より) |
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