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本郷通りへ出て、南に歩くとこの地の象徴、東大の赤門が見えてくる。旧加賀藩の上屋敷だった当時、13代藩主前田斉泰が11代将軍の娘、溶姫を迎える際に建てられた。そこをくぐり構内へ。
夏目漱石の小説から名が付いた三四郎池のほとりで、東大生同士のカップルに声をかけた。本郷ゆかりの一葉がお札になるのは、身近に感じてうれしいと言いながらも、「なぜ一葉や野口英世が選ばれたのかを、もっと分かりやすく国民に説明してもいいと思う。子どもたちが、文学や科学に興味を持つ良いきっかけになるのに」。なかなか手厳しい。
ちなみに財務省によると、樋口一葉がえらばれた理由は、「女性の社会進出の進展を配慮した」という。日本銀行券の肖像としては初めての女性になる。
寄り道を楽しんだ後、最後に一葉終焉の地へ向かう。春日駅に戻り、白山通りを北へ5分ほど歩くと、ビルの前に碑が立っている。一葉はつかの間開いた下谷竜泉寺の駄菓子店を閉じ、当時、丸山福山町と呼ばれたこの地に明治27年(1894)5月に引っ越してきた。ここで過ごした2年間に『にごりえ』や『たけくらべ』などの名作を次々に書き上げ、後に「奇跡の14か月」と評される。
が、明治29年11月23日、結核で24年の短い生涯を閉じる。東大の北に住み、本郷とゆかりの深い森鴎外らに作品が評価され、これからという時期だった。
改めて、お札になる一葉に思いを馳せた。もっとも名が売れても、最後までお金には苦労していた一葉。今頃、「私がお札になるなんて」と苦笑いしているかもしれない。
(文/熊崎俊介) |
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【交通】都営大江戸線、都営三田線春日駅下車。または、南北線、丸ノ内線後楽園駅下車/車の利用は適さない
【備考】ボランティアガイドなし
【宿泊】本郷地区にホテル、旅館13軒
【問い合わせ】文京区観光協会 TEL 03-3811-3321 |
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(2004年旅行読売12月号より) |
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