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「真正面に大きな富士山を望む 広重も描いた絶景の薩た峠へ」
真正面に大きな富士山を望む
 
 引き戸を開けて外へ出ると、すぐ斜め前にひっそりと一里塚跡の碑が立っていた。江戸から40番目の一里塚、つまり約160キロ地点だ。この碑の前を延びる急な坂が旧東海道のさつた峠への入り口になっている。
 さつた峠は東の箱根峠、西の鈴鹿峠と並び、東海道の三大難所のひとつだった。江戸末期に皇女和の宮が十四代将軍家茂に降嫁する際、この峠があるので木曽の山中を通る中山道を選んだという逸話があるほど崖沿いの道は険しかった。
 現在は、頂上付近まで車で登ることができ、気軽なハイキングコースとして中高年に人気が高い。富士山の絶景ポイントとして、中国や台湾からの観光客も多いという。
 ミカン畑の中の舗装された旧東海道をゆっくり上がっていく。背後には富士山があるはずだ。振り返ってじっくり眺めたい。が、ここは我慢だ。頂上での展望に期待し歩を進める。
 30分ほど登り、峠の駐車場から崖沿いの遊歩道へ入った。道は細いが、よく見ると脇のミカン畑の中に石垣が部分的に残っている。大名行列も通った当時の東海道の道幅を示すという。ざっと5メートルほどか。さらに2分ほど歩くと、小さな展望台へ到着した。 ここでいよいよ振り返る。
 真正面に白く大きな富嶽。その裾野がぐるりと弧を描いて駿河湾を抱き込み、右手には伊豆半島までが一望のもとになる。早春の日を浴びて、きらきら光る海面が美しい。眼下を走る東名高速と東海道線を除けば、浮世絵師歌川広重の描いた景色がそのまま広がっている。当時とほぼ変わらない景色は今や、東海道でもここだけだという。
 海からの風が汗ばんだ体に心地よい。この景色を見て、旅の疲れを癒やす旅人の心もまた、昔と変わらないのだろう。

(文/熊崎俊介)

地図
 
歩き旅メモ
【交通】東海道線由比駅下車/東京方面からは東名高速富士ICから国道1号線経由約30分。関西方面からは東名高速清水ICから国道1号線経由約30分。由比川河川敷に無料駐車場有り。
【備考】ボランティアガイドあり(要予約、無料)。問い合わせは、由比町企画観光課まで。
【宿泊】由比周辺に旅館、民宿3軒
【問い合わせ】由比町企画観光課 TEL 0543-76-0133
 
(2005年旅行読売4月号より)
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